AIプロンプトは、思考の鏡

コンテンツデザイン部 T.K

はじめに

かつて、写植がデジタルフォントになり、手描きがIllustratorに変わったときも「職人の技が失われる」という懸念はありました。しかし、今回の「AI生成」の波は、それらとは比較にならないほどのスピードと衝撃を持っています。

今、私たちが直面しているのは単なるツールの進化ではなく、「人間が手を動かして作る」という行為そのものの価値が問い直されているという事態です。AIは、私たちが数時間、数日かけていた作業をわずか数秒で、しかも「それなりのクオリティ」で提示してきます。


AIと歩む、新しい役割

「作る」作業はAIへ。私たちは、その先にある「価値」を磨くために必要なことは?

「問い」を立てる力

AIは指示(プロンプト)がなければ動けません。「なぜこのデザインが必要なのか?」「クライアントが本当に解決したい課題は何なのか?」という、出発点となる問いを立てる力は、人間にしかありません。

「物語」を紡ぐ力

AIが生成した美しい画像には、背景にある歴史や想いが欠落しています。そのデザインがなぜその色で、なぜその形なのか。ターゲットの感情を揺さぶり、納得させる「物語」が必要です。

「選ぶ」という責任

AIは1,000案を提示できますが、その中から「これが正解だ」と決定することはできません。最終的な責任を取り、ブランドの未来を背負う1枚を選び抜くこと。それは、クリエイティブにおける「意思決定」という最も高度な技術です。


AIを最高のパートナーに変えるための、マインドセット

私たちが今、取り組むべきは「AIを拒絶すること」ではなく、「AIを使いこなしつつ、自分の『個』を尖らせること」です。

AIで「ラフスケッチ」する

アイデア出しの段階でAIを使い、自分一人では思いつかなかった視点を取り入れる。

デザインの「基礎体力」を再教育する

AIが作ったものに「違和感」を感じるためには、タイポグラフィ、色彩理論、レイアウトの基本といった古典的な知識がこれまで以上に重要になります。

「身体的経験」を増やす  

画面の中のデータだけでなく、実際に紙に触れ、街を歩き、人と話し、五感で感じる経験を増やすこと。そのリアルな感覚こそが、AIには真似できないデザインの「手触り」を生みます。


おわりに

「作業」から解放され、「創造」へ

AIの普及によって、グラフィックデザインは「誰でも作れるもの」になるかもしれません。しかし、だからこそ「誰が、なぜ作ったのか」という価値がかつてないほど高まっています。

私たちは今、単純な作業という重荷をAIに預け、「本来、人間が考えるべき本質的なクリエイティブ」に集中できる贅沢な時代に立っています。AIを隣に座らせ、あなたは指揮者としてタクトを振ってください。デザインの主権は、常にあなたの手の中にあります。